法人の節税
法人として存在する限り、税金は払わなければならないものです。しかし、不要な税金を払うことは、会社の資金を徒に乏しくさせることになってしまいます。そこで考えなければならないことは、節税です。
ここでは、色々な節税方法を紹介していきます。
役員や従業員、福利厚生等々に適切に資金をまわすことで、上手に節税をしていきましょう。
● 分割会社の設立(事業分割)
事業を分割して別会社を作り、事業ごとに各会社に所得を分けることで、税金が安くなることがあります。簡単な例を挙げておきます。
例) 課税所得4,000万円の会社の法人税額
〜800万円 15% 120万円
800万円〜 25.5% 816万円
計 936万円
この会社を分割して各社2,000万円の課税所得とする。
〜800万円 15% 120万円
800万円〜 25.5% 306万円
計 426万円
2社合計 426万円×2=852万円
● 役員退職金の活用
役員退職金は損金に計上することができるので、退職時期や退職金額を見直すことで、所得を圧縮することが出来ます。
また、青色申告の場合は、繰越欠損金を9年間繰り越すことが出来ます。
もっとも、不当に高額な退職金は不当部分について損金に算入することが出来ないので、注意が必要です。
※ 一般的な役員退職金の上限
退職金の上限 = 最終役員給与月額 × 役員在職年数 × 功績倍率
● 役員給与の活用
役員の給与は経費として計上することができるので、役員給与をあげることで、納税額を減縮することができます。
ただし、役員給与の変更は期中にはできず、変更ができるのは原則として、事業年度開始後3カ月以内となります。したがって、期首に利益予想をしっかりと立てて、適切な役員給与を設定することが大切です。
● 売上計上基準の活用
税法上、売上計上基準というものがあります。そして、商品や製品などの物品の引き渡しがある取引については、得意先に商品などを引き渡した日野井売り上げを認識する「引渡し基準」が採られています。そしてこの引渡し基準には「出荷基準」「検収基準」「使用収益基準」等、様々ある基準の内で、会社側が自社に有利な基準を採用することができることになっています。
出荷基準 → 会社が得意先に出荷した日に売り上げを計上する方法
検収基準 → 得意先が商品などを検収した日に売り上げを計上する方法
節税には売り上げを遅らせた方が、売上を繰り延べることができるため有利になります。したがって、この2つの方法を比較した場合、検収基準の方が節税には有利ということになります。
ただし、会社が一度選択した売上計上基準は、利益操作を排除する趣旨から、毎期継続適用しなければなりません。
もっとも、税法上、合理的な理由があれば基準の変更はできますので、変更の際には税務調査対策として、変更した根拠を明文化しておくとよいでしょう。
● 交際費の活用
交際費に関しては、原則として経費には算入できません。
しかし、資本金1億円以下の中小企業においては、600万円までの交際費は、そのうちの90%を経費とすることができます。
また、企業の規模を問わず、取引先との飲食費など、社外の人間が含まれている場合の交際費については、当該飲食の費用全額を当該飲食に参加した人数で割ったときに、1人あたり5,000円以下であれば、その費用を全額を経費に算入することができます。
したがって、1回の飲食費を1人あたり5,000円以下にすれば、交際費を経費で落とすことができ、節税ができることになります。
ただし、社内の者だけでの飲み会などには、この基準は適用されませんので、注意してください。
● 保険の活用
法人を対象とした保険には、その加入目的によって保険料を費用に計上できるものがあります。
保険に加入せず、自ら銀行預金等で積み立てをすることで、不測の事態や従業員の退職金への対策とすることも、もちろんできます。しかし、その場合には、目的が何であろうと、預金となってしまうため、その全額が資産となってしまいます。
保険は多種多様であり、本当に様々なものがありますので、詳しくは税理士等に相談なさるのが良いと思います。
そのため、ここでは簡単な例と説明だけに留めます。
・ 定期保険
定期保険とは死亡保険のうち、保険期間のみ保証がある保険です。保険料が割安で、満期返戻金や配当金のない掛け捨て保険であることから、支払保険料は原則として資産計上せず、全額費用となります。
役員や従業員の死亡退職金や経営者の死亡時に急きょ必要となる運転資金に備えることができ、役員退職金や弔慰金と損益通算させることで利益を圧縮することができます。
・ 養老保険
養老保険とは被保険者が保険期間の途中で死亡または高度障害となった場合に保険金が支払われ、保険期間満了時に生存した場合には満期保険金が支払われる貯蓄性も兼ね備えた保険のことです。
これについては、保険料の半分を費用にできます。
● 固定資産関係の節税
・ 固定資産除却損
会社が固定資産を有する場合、その物について、それぞれ固定資産台帳に記載するものと思います。しかし、この台帳について毎年チェックをしていない会社は、意外と多いものです。すでに処分してしまったものや、使わなくなった資産については、固定資産台帳から削除しましょう。これにより、かなりの節税ができる場合があります。
このとき、ソフトウェア等の目に見えない資産についても、見逃さないようにしてください。
また、事務所の権利金についてもチェックをしてください。権利金(20万円以上の場合)は、一括で経費計上することができません。これは長期前払費用などの科目で資産計上されています。償却途中で引越しした場合などには、この権利金は他の固定資産と同様に除却しなければなりません。
・ 中古資産の耐用年数の特例
それぞれの固定資産には正しい耐用年数があり、その正しい耐用年数で減価償却計算をすることになります。もっとも、中古資産の場合には耐用年数を短縮し、減価償却額を増やすことができる特例がありますので、これを活用することで節税ができます。以下に計算式を載せておきます。
「法定耐用年数の全部が経過しているもの」
法定耐用年数 × 0.2
「法定耐用年数の一部が経過しているもの」
(法定耐用年数 × 経過年数) + 経過年数 × 0.2